(野村康斗)

    もうすぐで全国大会。終われば引退。
    本来なら定期演奏会で引退だが、今年は全国大会が例年より少し遅いため、定期演奏会は9月に終わっている。

    今年の自由曲は曲の冒頭にトランペットソロ。2人で吹くため、ソロは俺と零里。

    2人でソロ練習をし、少し休憩をとった。

    「もうすぐで引退か~。」
    零里は外に向かって言う。

    「「写楽」の代 も、もうすぐ終わりだよ。やっぱり金賞とって気持ちよく終わりたいよね」
    こちらに向かって言ってきた。

    「零里と練習するのもあと少しか。」
    「なんか切ないね」
    「ほんとさ」

    この夏はお互い頑張ってきた。課題曲は比較的トランペットは目立たない…と思う。自由曲のソロを完璧にさせるために、って。顧問の先生は、「何がなんでも自由曲で康斗にソロ吹かせるからな」って去年の冬に俺に言ってきた。なぜ俺がソロ吹くとこだわるか。

    「写楽」を選曲した理由は前に3年全員で聞きに行った。「今年の二中ならできる」と。
    もっと聞けば、俺が入学する1年前…マインドスケープの代で本当はこの曲をやろうとしていたみたい。

    去年の二中は木管…特にクラリネットが上手だった。巧先輩の超絶技巧は凄かった。他にもアルトサックスを吹いていた去年の部長、舞花先輩も。昨年の3年生は音色にこだわってる人が多かった。それにちなんで選んだ曲が昨年の自由曲「フェドーラ」だ。
    俺は昨年は三年の先輩がいながらも1stを吹いた。先輩からの申し出と先生からの意見で。

    一昨年はフルートの3年生と、兄ちゃんたちパーカッションが上手いのもあったが、合奏力がとても良い年だったため、「大いなる約束の大地 チンギス・ハーン」。全国まであと3点。自由曲は完璧だったものの課題曲のIV番が惜しかった。







    本番2日前。
    支部前や昨年の全国前の緊張感とは違い、メンバー全員がいい笑顔だ。

    「今日が最後の仕上げです。明日から名古屋に出発して本番は明後日の前半の部最後。みんなならいける。目指すは金賞のみ!頑張ろう!」

    部長でファゴットの菜摘が言い、メンバー全員は返事をした。

    「そして康斗、零里、真奈美。大丈夫、私たちならいける。最高のソロを吹く。響かせる。いいね?」

    「「「はい!」」」

    やる気も充分。



    「ここでの練習は今日で本当の最後。あとは明日、ホテルでの練習と明後日の本番前のみ。二中ならできる。いい演奏をするんだよ!」

    先生がそう言い、返事をする。

    「あと、金管。…特に康斗と零里は思い切り吹くのは今日で最後な。本番前に口壊されても困るから。不安かもしれないけどこれが二中のやり方だから。吹きすぎないこと。」

    わかってるさ。

    今までの練習は無駄にしない。
    今年も全国で金賞とるため。







    次の日は3時間目まで授業を受け、昼からバスで出発。夕方頃に名古屋へ着く予定だ。
    ちなみにメンバーじゃない部員は明日の本番前に合流するためここにはいない。

    バスに乗って少し経つと、和と沙也乃が立った。

    「実は、舞花先輩たちフェドーラの代と、蓮希先輩たちチンギスハーンの代の先輩方からメッセージ頂いたので、今から各パートリーダーに渡すのでパートリーダーはそれを読んで欲しいです。何人か書いてもらえなかった先輩もいるけど…」
    「和がフェドーラの代の分、私がチンギスハーンの代の分を持ってるんで取りに来てください。」
    2人がそう言って、パートリーダーは取りに行った。

    最初はフルートパートの陽和から。
    「まずはフルートからいくね。」



    みんなならできる。
    最高の演奏をするんだ。
    そして絶対金賞取って帰ってきて!
    FL.佳弥乃

    金賞!とるんだ!
    FL.&picc 千穂

    今年は課題曲も完璧にするんだよ?
    笑顔が絶えない皆なら
    最高の演奏できるのよね?
    FL. 田口萌乃

    「次にダブルリードいくね。渓斗先輩のしかないや」
    菜摘が読み始める。

    大好きな後輩たち。
    いい音色を響かせろ!
    Fg 渓斗

    「次はクラ。学年ごとになってるや」

    私らが夢見てた舞台に2度も乗れる
    1度も乗れなかった私たちを越えている
    今の二中なら金賞間違いなし!
    がんばれ写楽の代!
    チンギスハーンの代 成実、麗香

    君たちはすごい。
    昨年の喜びも超えて見せろ。
    フェドーラの代Cl3年

    「サックスは4人の先輩からだね、」
    和が読み始める。

    2年前の悔しさを一緒に感じた
    あの時はまだ1年生だった君たち。
    2年、3年になって2度も晴れ舞台に乗れる
    そして2度目の全国金賞目指せ。
    A.Sax 峯 京汰

    大丈夫!不安にならない!
    信じてるよ!最高の演奏できることを!
    T.Sax 末松美紅

    去年の同じ晴れ舞台
    君らはもう一度乗れるんだね
    そして私たちフェドーラの代を
    超えて見せて。いや、きっと超えれるさ。
    去年よりもいい笑顔してるもの。
    フェドーラの代部長 A.Sax 藤村舞花

    今年はみんなが
    二中を全国へ連れていった。
    いい演奏期待してるよ!
    A&T.Sax 小宮涼貴

    「ホルンは里穂先輩と魁先輩からね。」

    みんなは選ばれた。
    全国大会への切符を手にした。
    目指すは金賞しかないよね??
    Hr 半田里穂

    とりあえず、楽しめ!喜べ!
    いい演奏をしろ!
    Hr 塩田魁

    「お、っと次はトランペットの番か」
    トランペットには陣内先輩と美里先輩が書いてくれた。陣内先輩には沢山怒られた。
    美里先輩とは1stのことでいろいろあったけど、とても誇れる先輩だ。

    あんなにできなかった子たちが
    私達よりもできるようになって
    びっくりしてるよ。頑張れ!
    trumpet 陣内

    今年は昨年以上に大変だったのかもね。
    昨年は昨年、今年は今年。
    今年の晴れ舞台へ経つのは今のみんな。
    私達は応援しかできないけど
    頑張って!
    trp 平岡美里

    ありがとうございます。
    先輩たちのためにも、頑張ります。

    「トロンボーン はチンギスハーンの時の先輩から頂きました。」

    他校の悔しさを背負ってここまで来たんなら
    金賞しかとれるものはないよな?
    trb 平舘敬也

    心に残る演奏をするんだよ!
    写楽の代のみんなならできる!
    trombone 紗南

    「バスパートは3人の先輩からです」

    私たちと一緒に立てれたあの舞台
    また、笑顔で帰ってくるんだよ
    Euph 茉莉乃

    君たちならできる!
    tuba 武内

    地区…県…いや、支部代表
    僕達の周りの中学校代表として
    胸を張って演奏するんだ!
    チンギスハーンの代副部長 bass 及川和葉

    「最後にパーカスから。なんと5人全員…」
    もう既に泣きそうな沙也乃が読み始める。

    あの頃はただついてくだけの子だったのに
    今では部活の中心となった3年生
    そしてその3年生を支えた1、2年生
    みんなの力を出し切れ!♪
    大好きな二中の吹部、心から応援してる!
    Perc 星野紗英

    ここに来るまでも大変だっただろう
    でも全国大会という晴れ舞台は
    とても楽しい時間だろうね
    自分たちが君たちを連れていけなかった
    この舞台に君たちは導いた
    最高の演奏するしか ないよね?
    チンギスハーンの代部長Perc 野村蓮希

    一緒に夢見て 一緒に夢叶えて
    そして後輩の夢も叶えた3年生。
    去年一緒に晴れ舞台で演奏した2年生。
    それを影から見てきた1年生
    みんな違うけど音楽は一つになる。
    金賞とってまたあんな風に喜んでね。
    Perc 市森碧葉

    全国大会に出るんだもん、
    金賞以外ありえないよな??
    審査員、観客の心に残る
    最高の演奏をすること。
    Perc 小倉詩音

    一生の思い出。思い出の宝物。
    吹奏楽コンクールの全国大会は
    みんなにとって人生の中でいい経験の一つ
    そしていい演奏をして、よりいい
    思い出にしたら、最高だよね
    Perc 丸山穂香

    「…以上…です。」
    沙也乃が読み終えると、菜摘が発言する。
    「このように沢山の先輩たちが期待してます。金賞とるんだと。金賞しかありえないと。
    これを聞いたら金賞しかありえないよね?そしていい演奏を響かせたいよね。明日は頑張ろう! 」

    バスの中全員が返事をした。








    全国大会のステージに立つのは2度目。
    2度目の金賞を目指していざ

    桜第二中吹奏楽部は全国大会のステージへ立つ。

    課題曲が終わり、自由曲の演奏。
    零里のほうを向くと、真っ直ぐな瞳でこちらを向いていた。

    《頑張ろう》

    ~♩

    彼と彼女の音は会場を魅了させた。

    ~♩♩

    12分間の演奏が終わった。
    あっという間だった。
    楽しかった。









    「康斗!零里!ソロめっっちゃくちゃ良かったよ!!!」

    その声は…

    「「美里先輩!?」」

    去年の3年生、美里先輩だった。

    「美里先輩泣かないでくださいよ~」
    「いや、泣くよ。康斗も本当に上手くなったね。…あの時康斗に1stの座進めてて良かったわ」
    「あ、いや、それは…」
    「私も今じゃ続けてないしね。西星の吹部、特進科の人入れないから」

    美里先輩は部活辞めるかまで考えてた先輩だ。進路のことで悩んで、それでも乗り越えて昨年俺らと一緒にこのステージへ出ることができたんだ。

    この日は美里先輩の他にも、フェドーラの代だと碧葉先輩と巧先輩と魁先輩に萌乃先輩、穂香先輩が、チンギスハーンの代だと美紅先輩と紗南先輩、京汰先輩に兄ちゃんの、10人が来てくれていた。先生が今までのお礼だ、と言い事前にチケットを買っていたらしい。





    結果発表の時間になり、会場入り。
    部長と副部長は先に言ってたが、
    打楽器積込みもギリギリだったため、
    既に何校かが発表されていた。

    「出演順15番 ○○支部代表 桜市立桜第二中学校

    …ゴールド金賞」

    「「「きゃああああああああああ!!」」」

    「金賞!金賞だってぇ!」
    横にいた真奈美が大号泣しながら言う
    「良かったな。一安心」





    会場の外へ行くと部長の菜摘が待っていた。

    「審査表を読ませてもらったけど、課題曲では特に打楽器が良かったとのこと。そして自由曲、トランペットソロがとても良かった。会場全体に響いていた。と書かれてました。」
    菜摘が俺と零里のほうを見て言う。

    「そしてたまたま西星の先生が聴いてくださってたんですけど、今年の「写楽」は名演だとおっしゃってました。そして点数は昨年よりかなり上です。拍手!」
    パチパチ、全員拍手する。





    「写楽の代」はここまでだ。

    1年生の時は全国大会目前で敗退。あの悔しさは忘れない。先輩たちの頑張りもすごかった。見習わなければいけないところもたくさんあった。
    2年生の時は全国大会金賞へ、先輩たちが導いた。昨年の3年生は仲良くて協調性ほある人がたくさん。そして部活意欲も高かった。

    そして今年は
    自分たちの力で上へ上へと目指した。
    結果、その成果は発揮できた。

    第二中吹奏楽部、写楽の代

    大好きです。


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