(北川日菜子)
「ひーなこ、」
「わ!」
貴斗が私のことをくすぐってきた。
「ほんっとあんたはさー」
貴斗は西星の工業科であり、ソフトテニス部。中学時代は3年間同じクラスで1番親しい男子。急にエロいこととか言うからまあそこら辺の男子と変わらんし。
中学3年間吹奏楽部だった私にソフトテニス部のマネージャーを勧めてきたのは貴斗だった。貴斗は 部活推薦で西星へ。私は白商落ちて西星へ来たんだけど、いつでも支えてくれたのは貴斗。中学の時からいつでも隣にいる彼。「付き合ってるの?」っていろんな人に言われるぐらいだ。
「そんなことしてるからいつも皆に彼氏って間違えられんだって何回言ったらわかる?」
「あーはいはい。別にいいだろ」
「わかってないな」
「うるせーなー。さすがあっちゃんの元カノ」
「その話は触れるなって言ったじゃーん?さすが智恵ちゃんの元彼氏」
「だまれ」
お互いがお互い中学時代付き合ってる人がいた。
私の元彼は貴斗とも仲良かった充輝ってやつ。中1の冬から中2の夏まで付き合ってた。みんなにあっちゃんて呼ばれてる彼は現在は桜樺高校のバスケ部だ。
一方貴斗の元カノの智恵ちゃんは吹奏楽部時代のクラリネットの後輩だったが、かなりの男好きで中2の冬に2ヶ月だけつきあってた。たしか志望校は共栄だから、もう貴斗や私と会うことはないだろう。
少し話し、別れ際に、小さな声でこう言われた。
「でも俺も…カレカノと間違えられるのは…嫌じゃない」
「ん?」
「なんでもねーよ。んじゃ!」
私の中で何かがひっかかった。
「それ絶対、日菜子のこと好きだってことだよ」
次の日の簿記の時間、碧葉と玲来と佳奈穂にこのことを話したら、玲来に言われる。
「貴斗くんねー。工業科の3組だよね。会う度に喋ってない?日菜子たち」
佳奈穂に言われる。
「べ、別に…私も本当は間違えられるの嫌じゃないけどさ…」
顔真っ赤にして私は言った。
「日菜子顔真っ赤!」
碧葉がニヤニヤしながら言う。
そしたら後ろから隣のクラスのソフトテニス部の翔真が話しかけてきた。簿記はクラス関係なくやっているんだけど、そーいえば翔真が後ろにいたの忘れていた。
「くっついたほうがいいと思うけどねー。今のお前らなら」
「ほらー、同じ部活の翔真が言ってるんだよ!」
「碧葉うるさい。そっちこそ柊先輩といい感じじゃん」
「まー、恋愛対象としてはまだ見れないけどね、うん」
碧葉が今誤魔化したけど、まさに私もこれ…なのかもしれなくもない。好きかと聞かれる以前にまだ見れないのかもしれない。でも…やっぱ見れるのかもしれない。
「相手も貴斗だしさ、きっといけるって」
「そっ…かな。」
「うん。今でも普通にカレカノに見えるけどな。貴斗もべったりだし」
「そーだよね…。よく触ってくるもん中学の時から」
「一歩間違えたらただのセクハラだけどな」
「ほんとそれさ。」
本当にセクハラかって言いたいぐらいだ。
それから数日後だった。出来事があったのは。
部活が終わり、玄関にて。
「一緒に帰んねえ?」
と貴斗に言われた。
「いいよ、」
そう返すとすぐに行くぞ、と言われて2人で歩いた。
普段なら世間話しかしてないけど、今日は何も喋らない。
「そーいえばさ、聞きたいことあるんだけど」
ずっと黙ってるのも嫌だったから私から話をした。
「何?」
「この前のさ、その…カレカノと間違えられるの嫌じゃないって言葉…」
「ああ…聞こえちゃってたか?」
「小さくだけど聞こえたよ」
そうして貴斗は止まった後、私の目の前に来た。
「日菜子が好きってことだよ」
貴斗の目がまっすぐこちらを向いている。
「お前じゃなきゃ駄目なんだ、俺には。ずっと傍にいてほしい。つまりは…俺と付き合ってください」
私は少し目線を外し、黙った後に
「…うん、よろしく。」
貴斗に向けて笑顔でそう答えた。
「じゃあ、いくぞ」
貴斗は顔を赤らめながらも私の手を握った。
「本当に、私で良かったの?」
歩きながら貴斗に聞いた。
「言ったろ。お前じゃなきゃ駄目なんだって。お前しかいねえんだよ、俺には。依存症になる日も近くはないな。いや。多分もうなってる。」
貴斗は目線を私に合わせた後、キスをしてきた。
「俺さ、長い間理性保てない人だからさ。いつ手を出すのか分からない。それでもいい?」
「いいよ。…貴斗だから」
「ありがと、日菜子」
これからは君のことを愛します。
不器用だけど優しくて、いつでも側で支えてくれる君。
今日から私の、大切な人。
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