(中浦貴斗)

    この4ヶ月で学んだことはたくさんある。


    やっぱり貴女は俺の隣にいなければいけない存在。
    今まで以上に日菜子に絡んでない。マネージャーとプレイヤーってだけの関係だ。そりゃそうだ。別れたんだもん。

    そもそもなんで別れたのかっていうと話は4ヶ月前に遡る。






    「日菜子が二股している」
    という噂が流れたからだ。


    別れを決断したのはあいつだ。
    決して噂から逃げたとかではない。
    俺の発言が日菜子からの俺への信用性をなくしたから。

    話の発端は商業科の性悪女たち。

    日菜子は中学の時から比較的に女子には好かれてない。その理由の一つに俺もあるんだけど、男子とばかり喋っていて「男好き」って。
    中学の時はあいつは吹奏楽部だったから多少男子はいるもほとんどが女子だったため、一応なんとかなった。未香やののちゃんたちのお陰とも言えるけど。




    ーーーーーー

    4ヶ月前。

    「あのさ、

    「日菜子と透輝くんがキスしてた」
    「これはもう二股だよ二股」
    「さすがだよね、男好き。」

    …っていう会話が聞こえたんだよね、俺には。」

    俺が初めてその事を知ったのは隣のクラスの晟一から言われた言葉だった。

    「なにそれ」
    「俺もよく知らん。碧葉に詳しく聞いてみる。それにしてもやっぱ商業科女子性格悪すぎ」
    「商業科の女子が言ってたん?」
    「そう。」
    「でもまあ日菜子は元々商業科の中でも浮いてるみたいだからさ。」
    「何がしたいんだろうねぇ、女子って」

    まだこの時はその話を本気にしてなかった俺ら。
    でも後に知る。



    「貴斗くーん、ちょーっとこっち来てー?」
    昼休み、日菜子と同じクラスの女子数人に呼ばれる。
    ああ、こえーや。なんでいちいち。

    「日菜子が二股してるの知ってる〜?」
    …やっぱその話か。
    「見たんだよね。保健室で特進科の透輝くんと日菜子がキスしてるとこ。面白くて写真撮っちゃった。あはは 」
    そういって写真を見せてくる。

    「ちなみにこの写真広まってるから〜」
    「は?」
    俺はキレる。

    「別にキレなくても。もう遅い。学校中広まってるよ?」
    笑いながら女子たちは俺の前から消える。


    …どういうことだよ。

    確かに透輝があいつに好意持ってるのは何となく勘づいてた。でも何で。




    部活の前に透輝と話すことにした。

    「…キスしたのは事実。あいつは悪くない。」
    「でもお前のその行動が大きな事になってんだよ」
    「ごめん」
    「ごめんじゃ済まされねえよ!!」
    俺は透輝を思い切り殴った。

    「こっちの気も考えろや。」

    そういって透輝の元を去ると、目の前には日菜子が。

    「…透輝のこと殴ったんだって?」
    「そうだけど日菜子に関係ねえよ」
    「関係あるし。なんで殴ったの?」
    「お前のことでだよ。」
    「でもだからって殴る必要はないじゃん」
    「何、透輝のことかばってんの?」
    「そうじゃなくて、」

    「いーよ、日菜子も結局俺より他の男がいいんだろ?」
    …この言葉が、いけなかったんだ。

    「何よそれ。……呆れた。…もういいよ。ひとつも分かってないじゃん」

    日菜子はそう言って俺の前から去った。








    ーーーーーー


    「…ていう訳ですよ」
    俺はその事柄を誠人先輩に話した。

    「あれから部活以外では本当に話してないんか?」
    先輩に聞かれる。
    「話してません。さすがにもう限界…」
    「いつまでも一途で、いいね」
    「そうですか…?」
    「俺もね元カノとはいろいろね…あったからね。あと初恋の人とも」
    先輩は切ない顔をしている。

    …俺の初恋は日菜子だ。中1で同じクラスになった時…俺の一目惚れだった。話すきっかけをつくってくれたのは小学校の時から親しかった未香で、あいつには本当に感謝してる。

    「より戻したいんか?貴斗は」
    「まあ、はい…。」
    「んじゃちゃんと話すればいいじゃん。俺ら引退するまでに言っちゃった方が気も楽じゃない?」
    「そー、ですね。ってあと3週間しかないや」
    「3週間もあるじゃん。ちゃんと自分の中で整理できる期間もあるし。」
    「前向き思考なんですね、誠人先輩」
    「まあね。でもいざとなったらだめだ。」

    この先輩も先輩で恋話聞くととても辛い恋をしている。俺ら以上に。俺も恋の悩みはよく誠人先輩に聞いていた。一番相談できる人。恋愛で何かあればすぐ先輩に言っていた。そんな先輩もあと少しで引退するし、正直同期の奴らは翔真ぐらいしか親しいやついないし。


    「とりあえず頑張れよ、貴斗。」
    誠人先輩は俺の背中に手を添え、俺の目を見て言って去っていった。



    大丈夫。俺ならできる。
    もう一度告白しよう。






    とは決めたものの1週間が経過。
    なかなかタイミングが掴めない。

    「タイミング作ってあげるか?貴斗がこのままじゃ俺も嫌だし」
    その様子を見た翔真がそういう。

    「ごめん、お願いしていい?」
    「全然いいよ俺は。いいね、片想いって。してみたいや」
    「…翔真もいつかいい恋愛できるさ」
    「できたらいいな。」

    そう言ったあとに翔真は日菜子のことを呼びに言った。

    「今日の部活終わってから、食堂ね。まだ貴斗に会わせるとは言ってないから。」
    翔真はピースしながら言う。






    まさかそこであんなことに遭うとは
    この時はまだ思ってない。






    部活終わり、翔真と一緒に食堂へ向かおうとすると、女子のでかい声が聞こえる。

    「もめごと〜?」
    翔真がそう言いながら食堂のドアを開けるとそこにいたのは日菜子たちだった。

    「あ、丁度いいところに貴斗くんのご登場〜」
    こいつらは…商業科の女子だ。
    日菜子のことが嫌いな女子達。

    「貴斗くんもこんな男好きのどこが好きなの??透輝くんとキスはしてるし、おまけに…」
    「違う!それは違うの!」
    日菜子は泣きながら言う。

    「男とっかえひっかえ、貴斗くんも遊ばれてたんじゃない?」
    「碧葉より全然日菜子のほうが最低じゃん。」
    「こんなのと同じクラスとかやってらんねーよ」
    好き勝手、大声で言う女子たち。ほんとにうるせぇ。でも言ってることは正しいのか、違うのか、それがわからないから何も言えない。

    たしかに、日菜子が男子と2人でいるところは俺もよく見る。ただでさえ商業科男子の3割が同じ部活。俺と関わってるから余計に俺の周りのヤツも日菜子に関わろうとしている。

    「助けて…本当に違うから…」
    日菜子は俺のところに来る。

    「嘘つけ。じゃあこれは何よ?」
    女子達の中でもリーダー的存在であろう人が、携帯を出して写真を見せた。

    …義晴先輩だ。

    「だからそれは…」
    「うるせーよ!!!」
    その横にいた背の高い女子はオレンジジュースを日菜子にぶっかける。

    「お前らそれはやりすぎだろ」
    翔真が言う。
    「うっせー、隣のクラスのやつのくせに入ってくんな」
    横にいた女子が翔真を殴る。

    さすがにもう俺も見ていられなかった。




    「お前ら本当にいい加減にしろよ。」
    俺はそう言って近くの椅子を蹴る。

    「さっきから黙って聞いてたけどさ。前だってそうだ。いちいち証拠写真出して日菜子が悪人だって言いつけて。ふざけんな。そして何言われても俺が好きなのは日菜子だから。…変なことばっかしてなにしたい?とりあえずうるせえから黙れ。」

    「は、オメェこそ黙れやブス。あたしはこいつが許せないの!!!」

    この中のリーダー的存在なこの人、たしか名前は崎元梨柚。今思い出した。この人はあっちゃんのことが好きだ。あっちゃんとは、日菜子の中学の時の元彼である華元充輝のことだ。

    「…あっちゃんのことか。」
    「…なんで知ってるのよ」
    「今思い出した。前に聞いたんだよあいつから」

    日菜子も「え?」と言う。
    どうやら初耳だったのか。

    「そ、そうよあたしは…」
    「でもだからってお前らがしたことは許せねえよ。…日菜子、翔真、行くぞ」
    俺は2人を引っ張った。

    「…貴斗、ありがとう。…義晴先輩とは何も無いからね」
    「わかってるよ。どーせ義晴先輩の恋の悩み聞いてたんだろ?」
    「…貴斗には何でも見通されてるね。…さすが貴斗だ」
    「ありがとう。」
    「惚れ直した。」
    「…俺は元々惚れてる」
    「ふふ。」
    「…もう一度付き合ってって聞いたら?」
    「もちろんいいよ。」
    「…ありがとう。」


    「…こっちもやっと一件落着か」
    翔真がそう言って俺らの元を去る。

    「あ、翔真いたの忘れてた」
    「俺も」
    ははは、と俺らは笑う。

    「あいつに世話んなったし、今度あいつが恋に悩んでたら俺らも翔真の味方しないとな」
    「それね。てか恋しなさそうだよね」
    「もしもの話さ。」




    もう一度。
    今度こそこの手を離さない。
    一生かけて、愛すから。
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