女子ばかりの商業科に3年間いるが、ここまでひどい学年は俺らぐらいだろう。
柊は商業科で一番モテる。男子ながらピアノめっちゃくちゃ上手いし、ソフトテニス部でも中学時代から活躍していて西星には特待生で入った。そんな柊と付き合ってた碧葉が被害にあう。
商業科の3年女子は俺らのクラスの4組は全然いい。吹奏楽部が多いからか、むしろ碧葉のことかわいいとか、いい子とか言ってる人が多い。問題は5組。柊のこと好きで何回告ってもだめだったっていう女子がいるから。
碧葉と柊、二人は既に別れてる。ほとんどそいつらのせいで。
話は全て2年の惣平を通して聞いている。柊は教えてくれないけど惣平は碧葉にかなり相談されてるらしく、いろいろ知っている。
俺も中学時代から彼女はいるが、ここまでなったことはない。別れる寸前まで大喧嘩とかはしたことあるけど、他人が関わることはない。
嫉妬などで他人が入ってくるとわけわならなくなる。そりゃ好きな人に恋人できても嫉妬ぐらいはあるだろうけど、そこまでする必要はないんじゃないか。二中の時もそんなのが多かった。結局自分は振られるとわかってるくせに、なんでいちいちそんなことしなきゃならないのか。そんなことしないと気が済まないのか。
「やっぱ女子ばっかのとこって怖いんだね」
「うん。」
彼女の紗英にそのことを話した。紗英は同じ第二中出身で吹奏楽、そして中学時代は碧葉のパートの先輩だから碧葉のことはよく知っている。
「詩音の時のほうがまだ良かったのかもね」
「その時はね、他人関わってなかったからな」
「そっか。私らの周りだったら他人関わって別れたのってあと舞花たちじゃないかな」
「あー。恵介の時か。」
「和葉にあとから話きいたら本当にすごかったみたいだしね…」
「俺もそれは蓮希から聞いてた。」
舞花の話はおいとくとして、問題は碧葉のほう。
碧葉は恋愛経験は非常にあるほう。
付き合ってたのは詩音、柊だけだけど、変に絡んできてるのが工業科でバスケ部2年の晟一。聞けば幼なじみらしくて、詩音と別れてから柊と付き合うまでの間に何回か関係を持つ寸前までいっていたらしい。碧葉は美人だし普通にありえることなんだけど。
紗英と話していると、目の前にはとてもよく知ってる人物がやってきた。とても辛そうな顔をしている。
「柊……お前どうした」
「…さっき碧葉とちゃんと話してきたけどもう何にも上手くいかなさすぎて」
「何話したんさ」
「あとで言う。…横にいるのって航の彼女?」
「あ、うん、そう。星野紗英、桜高の3年ね」
軽く紗英を紹介した。よく考えれば柊と紗英は初対面か。
「…いーよな、航は」
柊はそう言って後ろを向いた。
「おい待てよ、」
「何さ」
「話聞かせて。今」
「…別にいいけど。」
そうして俺らは学校近くの店に入った。紗英は邪魔になるだけだから帰るね、とか言って止める暇もなくすぐ帰っていった。
「で、何があったんだよ」
「ちゃんと話したけどさ、もう一回付き合って欲しいっていったら断られた」
「…どうしてさ」
「これ以上俺に迷惑かけたくないって。別にいいよって言ったけど駄目だった」
「…まあ、あれだけやられれば精神やばいよな」
「うん。もうなんでこんなに上手くいかないんだ」
女子って怖い。5組の女子って気が強いやつばかりだって宗吾も響も言ってる。じっとしてれば美人な人多いのに。
よく紗英とかが読んでたような少女漫画にありそうなことばかり起きている。女子のいじめ。しかも相手は後輩。柊でも対処できなかったからもうこれ以上ヒートアップさせたらやばい。
「でもよく考えりゃ俺といても碧葉は傷つくだけどだよなって思った」
「…それはね。」
「あいつらさえいなきゃいい話だったのに」
「女子の嫉妬って怖いねえ」
「お前馬鹿にすんなよ、本気で悩んでんだから」
「別に馬鹿にしてなんかねーし。本当に思ってる」
「あー、はい。…俺帰る」
柊は帰った。
人間関係ってそう簡単には上手くいかないものだ。俺も紗英と付き合ってる間も何回か告白されたことはあるけどここまで経験はない。でも柊の現状を見て本当にひどいものだと実感した。人間関係に関しては恋愛にも限らない。宗吾だって部活で先輩にいじめられて部活辞めて。それに俺の中学のサッカー部も人間関係は酷かったから。
その人のいいところを見つけられないのは何故か。嫌いだから見つける気もない。ただ単に嫌いだから。いなくなってほしい。こいつさえいなければ私の恋は叶ってたんだ。…さて、そう上手くは行くか?
そこまでして奪うんだったら人間失格。逆に嫌われるだけ。柊だって、あの5組の女子軍団のことは嫌い。というかあいつらは4組ほぼ全員を敵にしてるぐらい。響も宗吾も4組行きたいって言ってるところを何回も聞いた。
卒業まで半年。人間関係さえ良くなれば、いい気分で高校生活を終えることができるんだろう。でもそれが、難しい。
「航、ちょっといい?」
5組の宮崎紗南に呼ばれた。紗南は第二中の時吹奏楽部だったし、このいじめの発端の奴と仲良いけど、いじめにあまり乗り気じゃないのは知ってる。
「…碧葉と柊のこと?」
「そう。…別れちゃったのか…。」
「碧葉も碧葉で精神的にやばかったと思うよ。」
「うん。そーいえば…詩菜と唯那も言ってたんだけど、部活の時本当にボロボロだって。」
「…それは蓮希からも聞いてる。練習中突然泣き出したりとかしてるって」
「別れただけでこれは、解決するのかな」
「どうだろうね」
問題はそこだ。別れたからって問題が解決する訳じゃない。今までの恨みとか色々あるから。
「本当にどうしたらいいんだろう。とりあえず碧葉ちゃんも柊も可哀想」
「…お前から強く言ってみれば?」
「でも…」
「友達関係は気にしなくていいだろ。だって東とか高峰とかもそれでグループ抜けてるんだろ?絶対抜けた方がいいと思うけど」
「…うん、そうするよ。…碧葉ちゃんたちが標的になったままなよりは全然まし」
「…絶対そうしたほうがいい。」
「わかった。ありがとう航。紗英と仲良くね」
「おう」
とりあえず、一日でも早くいじめが終わることを望むしかない。
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