(熊谷冬樹)





    高1の初夏。

    今日は部活がないけど、ちょっと練習していきたい。
    先生と部長のOKが出て、俺はテニスコートに向かう。

    女子テニス部も部活休みらしいけど、誰かいる。


    …同じクラスで女子テニス部の、佐川由衣だ。



    「あ、熊谷くんも練習?」
    「うん」
    「私も!」
    「…ちょっと試合してみる?」
    「やるやる!熊谷くん桜中の時県優勝してるよね!1回してみたかった!」


    そんな感じでシングルスをはじめた。



    あいつもソフトテニスだけど県大会優勝してるだろ。

    そう心の中で呟いた。





    結果は、俺の勝利。

    「さっすが熊谷くん!てかこれから冬樹ってよんでいい?」
    「ありがと。冬樹でいいよ」
    「OK!私のことは由衣でいいよ!!これからもさ、部活休みの月曜日はこうやって二人で練習しない?」
    「お、いいな!そうするか!」


    そんな感じで俺らは毎週月曜日、二人で練習。
    なんかもう楽しくて楽しくて。



    そんな秋のある日。

    「あ、今日ね、真里たちとカラオケ行くから行けない!ほんとごめんね!」

    そう言われてその日の練習はしなかった。
    その日は昔から仲が良い一真たち男バスも部活休みらしくて、俺は一真と浩紀と映画に行くことになった。
    ちなみに俺は桜学園中だったけど、普通に公立行ってれば二人と同じ南聖中だった。

    …で。
    映画が終わり、ちょっと立っていたら。

    渉が出てきた。

    「えーっと、ってあ、冬樹たち!」
    「…どうした?」
    「佐川が倒れた。すげー熱で」
    「…は?」

    そっか。この映画館の建物の中にカラオケもある。

    「冬樹なら佐川と仲良いだろ。あいつの親とは親しいか?」
    「え、まあ…親しいっていうか話したことは…」
    「じゃあ、佐川の携帯から、あいつの親に直接迎えにきてもらうよう言ってほしい。」
    「了解!」

    渉は既に由衣の携帯を持ってきてて、俺は連絡をした。

    「冬樹ありがとな。俺も会川も、佐川の親と面識ないし、直哉は絶対拒むし…。一真と浩紀もすまんな。」
    「いやいや。」

    そして直哉と会川が頑張って由衣をつれてきた。

    「大丈夫か?今お前の親呼んだから」
    「あ、ありが…と…」




    由衣の母親が来て、

    「わざわざありがとうね、冬樹くんたち。…でもおばさんこれから仕事だから冬樹くんついてきてくれないかしら」

    と言われ、俺ははい、と答えた。






    由衣の家。

    とりあえず寝させるまでは会川がついていた。会川たち女子バレー部は夜練があるというから会川はここで帰った。



    「…冬樹…ありがと…」
    「いやいや。ほとんど会川とか渉とかのおかげだろ」
    「冬樹もじゃん…ごめんね。高松たちといたのに…」
    「うん。あ、そうだ。来週はテニスコート来れる?」
    「来週…?多分行けるよ」
    「じゃあ、絶対…な!絶対来いよ!大事な話があるから!」
    「大事な話?別に今しても…いいじゃん?」
    「お前が熱ある中言えるかよ」
    「じゃあ私から大事な話をするね。…私、冬樹が好き!恋をしたの…。」

    ったくこいつはよ…

    「…うん。じゃあ来週来いよ。」
    「え、え、…うん。」






    一週間がたった。
    この日はまずはいつも通り、二人で。

    今日は俺の勝ち。


    「じゃ、これでかっこよく言えるかな。俺はこの前の大会でダブルスだけど優勝しましたー」
    「わー、おめでとう!私たち3位だったからな…」
    「んじゃ、もう1つ。
    由衣が好きです。付き合ってください!」
    「…え!え!」
    「返事はー?」
    「は、はいもちろん!私が告白したの覚えてくれてたんだ!」
    「当たり前じゃん。前言われて焦ったけど」
    「わーごめんね!」
    「…キス…していい?」

    由衣はコクりと頷いた。

    放課後の二人きりのテニスコートで、俺らは結ばれた。





    スポンサードリンク


    この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
    コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
    また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。