(高松一真)





    「一真って、七田のこと好きなのか?」


    高2の4月、昼休みに俺は遼太に呼ばれて、そう聞かれた。


    「…いつから気づいてた?」
    「最近。お前こそいつから好きだったのか?」
    「1年生の時から。もう一年になるかなー。」
    「…じゃあ俺が七田のこと好きってお前に言った時にはもう好きだったのかよ」
    「ま、そーだね。」

    俺が呑気に答えると、遼太は俺の胸ぐらを掴んだ。

    「……お前のそーいうとこほんと気に食わねえ。」
    「…勝手にキレてろ」


    そう言ったら、遼太は大きな音を出してドアを開け、教室に戻った。


    多分、バレたのは昨日の部活帰りだろう。
    たまたま冬樹と校門のところで会って、話していたから。後ろに遼太と伊月がいたのに気づいたのは同じく一緒にいた浩紀だった。

    遼太のことだし、こうなるのは予想していた。
    あいつは感情的になりやすい人だから、怒ってる時は怒ってる。悲しい、悔しい時は泣く。態度もかなりわかりやすい奴だ。
    対して俺はいつも冷静で感情がわかりづらいって、いろんな人に言われてる。怒ってる人には適当に言葉返してるし、遼太も俺のそれが気にくわないんだろう。










    「なんかもう噂になってるけど一真って美幸ちゃんのこと好きなのか?」

    と、部活の時に洸先輩に聞かれる


    「…好きですよ。去年から。」
    「あの子…恋愛に怯えてるところあるらしい。って宙夢は言ってた」
    「…まあ、話は宙夢先輩に聞いてるのでなんで怯えてるかっていう理由はわかります」
    「多分、遼太は美幸ちゃんの元彼が渉ってことは知らない。美幸ちゃんは渉が桜高にいること知ってるからあまり問題になったりしたくなくて話せてないだけらしい。多分、2年で唯一知ってんのは一真だ」
    「そうですか…」


    まあ、たしかに話はまだ曖昧だ。
    まず渉が気付かなければ話は進まない、と思う。
    渉は谷川と付き合ってるけど、過去は過去。七田と付き合ってた過去がある。聞いたらケンカ別れだそうで。
    七田は苗字変わったらしいし、渉は鈍いところには本当に鈍いからなぁ…。


    「…告白とかはしたのか?」
    「しました。2月に。」
    「返事は…?」
    「まだ保留ですよ。」
    「また…話がややこしくなりそうだな。」
    「…実を言うと、キスして逃げました」
    「は…?」

    そう、俺は七田に告白したときはキスをした。
    丁度、初恋の人の早紀さんに告白された時で、俺は七田にキスをすれば…早紀さんのことは完全に忘れることできるんじゃないかとおもっていた。気持ちの揺れは嫌だから。


    「…いろいろ、あったので」
    「まあ…俺は特に何も言わないけど話をごちゃごちゃにするなよ。せめて、渉が美幸ちゃんのこと気づいてからだ」
    「わかりました。ってかなんで渉に七田のこと教えないんですか?」
    「…美幸ちゃんがね、渉に気づかれるときは自分で気づいて欲しいって言ってたらしい。」
    「そうですか…。」



    まずは、待ってみるか。
    俺と遼太の話は、それからのことだ。




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