(須田直哉)




    中学…卒業。

    この3年間は本当にいろいろあった。
    中1から部活でレギュラーだった俺は先輩や先生からの期待の中、1時期いろいろむしゃくしゃしてて迷惑かけてレギュラーおろされたこともあった。
    2年の時は親友・亮介たちの死。あの日は本当に忘れない。
    そして成先輩から、部活のキャプテンも任されて。

    辛いこともたくさんあった。
    特に亮介が亡くなってからの部活は。
    いつも支えてくれた俊太には本当に感謝している。

    機嫌悪いことがよくあったり、顧問と喧嘩もしょっちゅうだったな。
    勉強もスランプの時あったしな。




    卒業証書を手に、学校の外へ出た。
    まずは最初に俺を見つけたのは悠希と伊月。


    「直哉先輩、卒業おめでとうございます」
    「…ありがとな、伊月。」
    「いえいえ。直哉先輩、桜高でしたよね」
    「うん、桜高。伊月の兄ちゃんいるよな?」
    「はい、といってももう卒業しちゃったんですけど」


    ここで伊月たちとは別れ、俺はある人のところへ向かった。




    ある人…とは。


    3年生になってからはクラスが離れてあまり喋っていない…由衣。
    塾同じってのもあるけど、塾でもあまり話さなくなって、
    話すのはとても 久しぶり。


    「由衣」
    「え、え、直哉…、どうしたの…???」
    「話したいことある」
    「話…?」

    「亮介や田神さんと一緒に卒業したかった。でもそんな夢は中学校生活半分もしないうちに終わった。あれからお互いは苦労の連続だった。…でも、今ではいい経験だと思えるよ。
    由衣と付き合ってた時も楽しかった。部活終わる時間があえば一緒に帰ってたし、一緒にいて本当に楽しかった。…ありがとう。」
    「…ううん、ありがとうっていうのは…こっちのセリフ。本当にありがとうね。」
    「いやいや。俺ら高校も一緒だけどさ、やっぱなんか今日言いたくて」
    「全然いいよ。」

    俺は一瞬黙った後、桜の木のほうへ移動した。
    「桜が綺麗だ…な。」
    「うん。今年はいつもより開花早いから、ね。まだ完全に咲いているわけではないけど」
    「そうだな。」
    「4月の入学式、楽しみだなー。」
    「桜高は桜の木いっぱいあるんだってね、成先輩に聞いた」
    「へー!あと遼太って高校一緒になるよね。あと公立落ちちゃった俊太も」
    「…そうだね。他にもバスケでの知り合いも桜高だしさ、みんなで通りたいね、」
    「たまには一中にも来ようね。」



    いつも見る風景。まだ完全に咲いていない桜の木。
    でもこの日は不思議と、綺麗に見えた。
    満開の時よりも、ずっと、ずっと…。







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