(中川伊月)



    何でだろう。

    部活ではどれほど頑張っても悠希には追いつけなかった。結果、2番目。

    兄と姉は有名大学の医学部に通っていて、常に順位は一桁。
    俺は一桁は本当に数回しかない。


    兄、次月は2年前、桜高男子バスケ部のキャプテンだった。
    光樹先輩や成先輩も尊敬している。

    姉の葉月は市内でのトップ高校、南陵高校で生徒会長もやっていた。

    すごい兄と姉がいて、よくすごいなーとか言われるけど…ね。

    逆に俺はずば抜けてすごいことはできないから、周りからは見放されてる感じ。








    入部の日。
    小学生の時からお世話になってる直哉先輩の話だと、

    「今年はバスケ部推薦は5人いる」とのこと。

    去年、一昨年は二人しかいなかったらしい。あと、次月兄ちゃんも部活推薦。




    その推薦の中にはもちろん…悠希もいる。

    父親同士が学生時代のバスケ部のライバルで。
    俺の父さんは負けてばかりだったと。
    だから、勝て、と。






    「とりあえず自己紹介。人も多いし簡単にしてね」
    とキャプテンの光樹先輩が言い、自己紹介となった。

    推薦の他の3人は…
    高藤洋、菅原拓斗、櫻井宏太。
    宏太は隣町の人だけど、他二人は中央中…か。

    去年、俺らは中体連、決勝で中央中に負けている。
    去年の中央中は、あの南聖中を1回戦で敗退させたし。


    俺はこの部の…何番目になるんだろうか。





    自己紹介は、
    「第一中出身で1年B組、中川伊月です。中川次月の弟です。よろしくお願いします。」
    と言った。


    「え?次月先輩の弟?」
    「うん。」
    宙夢先輩の言葉に、成先輩が返す。



    この言葉は言われなれた。でも…。

    プレッシャーが。

    次月兄ちゃんはとにかくすごい人で、それは3年の先輩も知ってる。
    俺はそこまででもないし…。




    突然行われた練習試合では同じチームに拓斗と宏太。他のチームに悠希と洋がいた。


    なんか他がすごくて、先輩たちはどう思ったんだろうか。










    「まーた、考え事かー?いつまでやってるんだー?」

    下校の時に、そう言って俊太先輩が来た。

    「…ごめんなさい」
    「まーわかるよ。次月先輩、すごい人だったらしいからプレッシャー感じてんだろ」
    「はい…。」
    「んなもん気にすんなって。伊月は伊月。次月先輩追っかけても次月先輩にはなれないよ?」
    「そうですよね…。ところで先輩たちからはさっきの試合どう思いましたか…?」


    俊太先輩の横にいた、渉先輩が答える。
    「みんないい感じだな。洋は…まあ…弟だし、宏太は小中一緒だからよくわかるんだけど、みんな楽しそうで何より。楽しくなきゃ、何もできないだろ??」

    と。



    …なるほど…。
    楽しければ、いいのか。


    「…そうですね。」

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