中体連の1ヶ月ぐらい前の話。
副キャプテンである怜が部活に来てなくて、惣平と一緒に怜を探すことになった。
怜と同じクラスの仁希の話だと、普通に学校来てたし、部活の物も持ってきていた。と。
校内どこ探しても、見当たらない。
一旦体育館前に行くと、仁希と、女バスのキャプテンの黒崎真歩がいて、何かを話していた。
「宙夢、早紀知らない?」
黒崎にそう聞かれるけど、俺は知らない。
早紀は、俺の彼女。
クラスは今は違うんだけど、女バスで、中1の秋から付き合ってて。
早紀は元々近所である一真のことが好きだった。だから俺から一方的に告白して、付き合って。
今は早紀の心も変わってる。と早紀の弟の冬樹が言っていた。
「いやー、その、早紀の靴はあるんだって。あいつも部活の物は持ってきてたし、怜も同じような感じでいないし、二人一緒にいるのかな、って思って」
「そっか、サンキュー仁希。」
「教室側は探した?多分教室…3年1組にいるかも。」
「1組ね、多分見てない」
「俺も一緒に行くよ。ほら真歩も。」
俺ら3人は仁希についていき、3年1組へと向かった。
1組の前に行くと電気がついてた。惣平が1組の教室のドアを開けたら、そこには…
やはり、怜と早紀は二人でいた。
早紀の状態から見ると、絶対怜は何かをしてた。
早紀はとっさに黒崎のところへ逃げ、黒崎たちは体育館へと戻った。
「怜、お前、部活サボってなにやってんだよ」
仁希が怜にそう言った。
「別に、今から行こうとしてたし」
「…そ。」
体育館へ戻ると、俺らを待ってたかのように後輩たちがこちらを見た。
「あ、先輩戻ってきた…」
「なんか、すごい、空気悪い気がする」
一真、浩紀がそう言ったのは俺と怜には聞こえた。
怜はそこでため息ついた。
俺はそのため息にムカついた。
「…何お前ため息ついてんだよ、」
「…別にいーだろ」
「迷惑かけといて、しまいには早紀に手出して、何考えてんのお前。てか早紀に何したんだよ」
「あらあら、中村くん不機嫌ですねー」
「お前のせいだ」
「早紀のこと好きだから、手出しただけ」
「ほんとお前何考えてんの。」
「べつにー。てか宙夢さ、そんなんしてる暇あったら」
「うるせぇ」
思わず怜を殴った。
「いった、お前こそ何考えてんだって話だよねー、そ~いうのほんと腹立つからーさー。」
と、怜も俺を…殴った。
しばらくそれが続き、仁希が
「まーまー、後輩たち怯えてる。それは練習の後にやれ。」
と言って、練習再開した。
「怖かったー、」
そう呟く後輩もいたが、本当のことだし、
むしろ俺はともかく怜があそこまで怖くなることはなかなかない。
怜は本当は真面目で責任感ある奴なのに、自分の感情が入り込むと訳わからなくなる奴だ。
俺もそれはあえて分かってた。
部活終了後、俺は惣平、黒崎、そして早紀とさっきのことで話すことになった。ちなみに怜は仁希といるらしい。
「で、早紀はなんでさっき怜と一緒にいたの?」
黒崎が早紀にそう聞いた。
「なんか…、今日委員会終わってファイル戻しに行ったら教室にいた。私のこと待ってたって。怜も委員会終わった後だったらしいけど」
「それで、俺らが見つけたのは4時半…てことは30分ぐらいいたのか?」
俺はそう聞いた。
「うん。告白されて、逃げようとしたら離してくれなくて…さっき宙夢たちが来てくれなかったらどうなってたんだろ…」
早紀は泣き出して、黒崎が早紀の頭を撫でた。
「…とりあえず、話聞いてると怜が1番悪い。ってことになる。でも怜もこういう時はああなる奴だから、しょうがないとも思える。それは宙夢もわかってることだろ。」
「それは、分かってる」
「…じゃあわかっててさっき…」
「うん。あれは俺が悪かった。単に腹たっただけ」
「でも中体連近いし引退近いし、そんなことしてたらあっという間。もっと練習に集中しないと、去年みたいな結果になるぞ。しっかりしろよキャプテン。」
「…わかった。…ごめんな、惣平」
惣平にそう話をされ、俺らは帰った。
あの後、怜はそんな様子はなくなった。
多分、仁希と話してたんだろう。
俺にもいつもの態度だし、練習してるし。
怜がまたこうなるのは、まだ先の話…。
スポンサードリンク