いつも考える。
父さんが亡くならなけれこんな思いをせずに笑顔のある家族になれたのだろうか。
母さんの再婚相手があの人じゃなかったら今も苦労はしてなかったんだろう。
現実は本当に俺を容赦しない。
本当の父さんは顔も覚えてないぐらい前に交通事故で亡くなった。俺と母さんをかばうように。
そして小学校低学年の時に親が再婚。父だけでなく早紀姉さんも家族になったが父は浮気ばかりしていてしまいには俺が小6の時に家を出た。金を持って。
丁度桜中入試終えたばかりの時で金に困った。そこで助けていただいたのはバスケ部の中村先輩の一家だった。
高2の7月、昼休みにたまたま中村先輩に会った。ちなみに中村先輩と早紀姉さんは元恋人同士。
「…冬樹、どうだ?」
「…まだ困ってることはいっぱいありますよ。お金に関しては特に」
「母さんと早紀はどうだ?」
「母さんは相変わらず仕事にストレス。姉さん
もバイト2つぐらいしてますし。」
「そっか。ま、近いうちに冬樹んちいくから。てかこのこと一真と浩紀しか知らないのか?」
「はい。二人以外には教えてません」
「お前もこのままだと抱え込むもの増えるぞ。彼女さんには全部話したら?」
「…そうですね」
由衣には前に少しだけ話したぐらいだ。
由衣…に限らず、みんなが羨ましく思えてくる。
家に入れば笑顔でおかえり、といってくれる家族がいる。
忘れ物しそうになったら慌てて荷物を持ってきてくれる。
みんなにとって何気ないことは俺の理想ばかりだ。
由衣の家に何度か言ってるが、由衣の両親は俺を家族のように迎えてくれるんだ。
由衣にはそのあとすぐにこのことを話した。
由衣は涙流してまでもしっかり聞いてくれた。
二日後。
久しぶりに家に中村先輩が来た。先輩一人で家に来るのは多分姉さんと別れて以来だろう。
先輩は姉さんのところに向かった。
「…早紀」
「…宙夢…どうして…?」
「心配なんだよ、特にお前が」
「別に心配しなくてもいいよ。」
宙夢先輩はため息をついた。
「…お前だって思ってるんだろ?」
「何を」
「冬樹と同じこと」
…俺と同じこと…?
「…自分の理想。こんな家族になったらいいなとかさ。松宮がこの前早紀と会って聞いたって言ってたよ」
「そっか…。たしかに夏波にはそう言った。」
「…たしかに理想と現実は違うけどさ、その理想を現実にすればいいんだよ。俺と姉さんがなんとかしないとな。」
俺がそう言って、姉さんは立った。
「…なんかありがとう。2人とも」
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