「翔真って恋愛したことなさそう」
これはよく言われる。人見知りがない性格だが、おっとりしてる雰囲気からそう言われる。
だが実は好きな人はいる。これは知ってる人は知ってる。他校出身のやつで知ってる人は…貴斗には前に話したから知ってるよね。でもその恋の発端も中学時代の元カノのことからなのだ。
先週、俺のほうから告白して付き合うことができた…夏純。みんなには すみちゃんと呼ばれてて、俺はあいつをすみと呼んでいる。女子ソフトテニス部の部長だ。ちなみに俺は男子ソフトテニス部の部長。
まだ他の人には言ってない。わざと隠すわけではなく、わざわざ言う必要がないと思った。まあいろいろ世話んなったやつに言ったぐらいか。自然と周りが知ってけばいいか、って。
それはさておき。
好きになったきっかけといえば、関連してくるのは中学の時に付き合ってた子だ。今はもう亡き…莉愛。中2の1月から中3の4月まで付き合ってた彼女は、亡くなったのだ。
あの時は、泣けなかった。でも衝撃と悔いも沢山あった。でも、そんな時に支えてくれたのがすみだ。
「あの日から3年か〜」
朝、一緒に登校していて、すみが話題を振ってきた。
「もう3年か…」
3年。あっという間に時は過ぎていく。
丁度3年前のこの日だ。
3年前の今日、部活を終えたと同時にすみがこちらにやってきた。
「翔真、よく聞いて」
それも、深刻な顔で。
「莉愛が死んだ」
呆然となった。
周りにいた人たちも、そして莉愛も所属していた女子ソフトテニス部の部員も、唖然としていた。泣き出す後輩もいる。
「…一緒に行こ、莉愛のところへ。本当のお別れをしに。」
すみにそう言われ、病院まで付いていく。
「本当に……」
冷たくなった、2度と温まることはない手を握った。
その帰り。
「…正直、泣けなかったよね。悲しすぎて。」
そう話題を出してくる。
そう、俺もすみも泣くことはなかった。
「後悔もたくさんある。もっと時間を大切にすれば良かったって。すみも入れた3人で一緒に西星行こって約束したのにな」
さっきまで全然泣けなかったのに、急に涙が出てくる。
「うぅ…」
「…たくさん泣きな。私の元で良ければ」
すみの元でたくさん泣いた。話も聞いてくれた。
莉愛の命日の日には、すみと2人で莉愛の家に行くのが恒例。莉愛の兄の大輔くんはいつもこの日には部活を休んでまで俺らを迎えてくれる。今日も大学での練習を休んで待っててくれていた。
「毎年、ありがとうね。きっと莉愛も喜んでるよ」
花を添え、俺らは莉愛の部屋へ移動した。
「晟一が言ってたんだけど、お前ら2人付き合ったんだってな」
「そうです。」
たしか大輔くんは晟一のお姉さんの美紅ちゃんと付き合ってたことがあるから、晟一とも親しいっけ。
「莉愛が亡くなる前にね、莉愛はこう言ってた。
もし翔真が他の人を好きになるとしても、すみちゃん以外は私は許せないと思う って」
莉愛の大親友は、すみだった。そして俺も含め3人でよく一緒にいた。一緒に西星行って西星でテニスしようねって約束した。俺とすみは約束は守れても、莉愛は守れることすらできない。
中2の3月のはじめに莉愛の身体の調子がおかしくなって入院したが、退院してすぐに道端で倒れてしまった。それが3年前の今日のことだ。
たくさん大輔くんから話を聞いて、莉愛の家を出た。
「私の本心を言うとね、翔真が莉愛と付き合ってた時から翔真のことが好きだった。でも二人とも大切だから、その想いは密かにしていただけ。」
俺の目の前にやって来て、目線を合わせてくる。
「想いは、昔から変わらない。私は翔真が大好きです。」
そう言い、にこっとしたあとすみは照れる。
可愛くて思わず、抱きしめる。
「俺も。すみが好きだ。」
「ていうかさ〜、翔真はいつからすみちゃんのこと好きになったわけ?」
たまたま朝練の体育館で会った晟一に聞かれる。
「いつだろうね。でも、支えてくれてた時じゃないかな」
「莉愛のこと吹っ切れたのはいつよ」
「わりとすぐ。まあ、すみのこと好きになったのはそのことからだから、さ」
「自分の想いをずっと隠すのは、お互い様か。でも頑張れよ」
「ありがとう、晟一」
晟一も中学ではクラスが同じだったから、支えてくれてた中の1人。他にも成や恵介には世話んなった。
今は、すみ…夏純との恋を頑張る。一緒にいれる時間を大切に、過ごしていきたい。そして最後まで2人幸せでいれますように。
スポンサードリンク