1年前の今頃といえば、部活部活だったか。昨年の全国大会では銅賞だった。これまでに出た全国大会で1番悔しかった。でも、演奏は悪くなかったからそこまで悔いはない。
小学校の3年生から、中学、高校と、夏は吹奏楽しかなかった。小学生の時はチューバで、中高はコントラバスだったから人も少ない楽器だったから出なかった年はなかった。全国出場は過去4回、中1と高校3年間。高校も、全国大会で演奏したくて桜高に入ったんだし。
大学生になり、吹奏楽コンクールからは離れた。コンクールに出ない夏なんて小2以来だから10年ぶりぐらいなんだろうか。吹奏楽は大学の吹奏楽団に入って続けているが、コンクールには出場しない。
吹奏楽コンクールの支部予選、俺は京汰と蓮希と行った。京汰も蓮希も音楽系の学校に進学。ちなみにいうと敬也は、入ってる一般の吹奏楽団がコンクール支部予選に出場するため、ここにはいない。
この日は高校A、職場一般Aの出番。
「今年高校Aで桜地区で残ってるのが桜高と西星か」
「西星は今の3年ほんとに楽器上手くていい子しかいないからな。俺ら去年はベルキスで支部銅だったけど。まーみんな支部で満足してたけど」
「蓮希の後輩の演奏も楽しみだな。碧葉もいるし」
「西星の今年の曲ってレ・ミゼラブルなんだね、俺らも去年吹いたわ」
「あー、たしかに去年京汰のとこやってたよな」
「俺ら県で桜樺の次西星だったから舞台裏で聴いてたな」
たしか俺は支部大会の時桜樺のレ・ミゼラブルは聴いた。本番終わって写真撮影してすぐだったから聴けたきがする。京汰のサックスソロは本当に上手かったな。去年は桜樺は支部金だったし。
去年は桜高も西星も桜樺も県大会突破して支部大会に出ることができたんだ。
ちなみに去年の桜高は歌劇「イーゴリ公」。今年はたしか「レッドラインタンゴ」だったはず。注目どころは舞花のソプラノサックスソロ。今まではアレンジ曲ばかりだったけど、今年からオリジナル曲にチャレンジすると。
俺らが1年の時は「トスカ」だったし、2年の時は「白鳥の湖」だったし。
まずは高校Aの6番目の西星。
今年の西星はかなり上手くなってると思った。
サックスソロのビブラートがすごい。たしかあれって南聖だった人だ。
西星はパーカッションが上手いからとても工夫されてる編成だった。この曲ってハープとチェレスタは本来あるんだけど、なくてもちゃんと工夫できてると思う。ビブラフォン使ったりマリンバ使ったりピアノ使ったり。
とりあえずいい演奏だった。マーチングは去年も全国行ったし有名な西星だけど、座奏もだんだんとうまくなってると思う。
「ねえ蓮希、あのサックスソロ吹いてたのって快人くん?」
演奏終了後、京汰が蓮希に聞く。
「あー、そーだよ。知ってんだ」
「いやあのさ、西星と桜樺で合同練習やったじゃん」
「そーいえば合同練習したな。忘れてた」
そして出演順19番。桜高の出番。
課題曲は毎年行進曲しか選ばない。課題曲演奏後、自由曲の演奏。
所々、コンクールなどで演奏されてるこの曲。変拍子など入ってくるがハイハットの刻みがいい動きをしていていいと思う。
舞花のソロもすごかった。この子は昔から注目されてるサックス奏者。舞花がソプラノサックスを吹くところを見るは中学以来かもしれない。アンコンもアルトだったし、去年はソプラノサックスは基本夏希が吹いてたしその前は先輩が吹いていた気がするから。
他にも色々な団体の演奏を聴いた。俺らの県の支部代表枠は4つあり、今年のそのうちもう一校は隣町の南高。演奏順は最後の25番目。俺らでも行ける距離にあるから第二中から入った人も多い。
南高の曲は「ウインドオーケストラのためのディテュランボス」。最初から連符ばかりの曲だがすごいまとまってる。この高校は個人技術もすごくて合奏力もすごい。でも俺が桜高にいたときに南高に負けたことはない。
作曲者が同じなのもあるけど、「ウインドオーケストラのためのマインドスケープ」と似てる箇所も何個かある。マインドスケープは俺が中2の時のコンクール曲で京汰がたしかアルトのソロみたいなところを吹いていたような。この年は支部大会ダメ金で終わった。
演奏終了後に蓮希が
「マインドスケープ思い出すな」
と言った。それに京汰は「あ、俺も」と言った。
やっぱり皆思うことは同じか。
「てか沙也乃ちゃんめっちゃ上手くなってるな」
京汰が俺にそう言った。
「ほんとな。南のパーカッション奏者として演奏したくて南高受けるとか言ってたらしいよ」
「あーそっか和葉は芹那ちゃんから話聞いてんだな」
「そうそう。芹那は春日行ったけどね」
妹の芹那もパーカッションやってるからね。
春日行った理由はなんとなく、だって。
そして職場一般のA編成が始まった。
3団体しか出場していないが、1つは知ってる人が多い団体。敬也もいるし紗英もいるし。
曲は「オリエント急行」。スパークの有名曲だ。俺ら中3の時にも高2の時にも定期演奏会で演奏した曲だ。
敬也のグリッサンドの音はやっぱりいい音してるし、トレインホイッスルは紗英がやるのは中高から相変わらずか。
結果発表の時間になった。
高校Aはここからは3団体が全国大会に進める。
西星、桜高、南高、3高共金賞だった。
金賞は6団体ある。
「それでは、全日本吹奏楽コンクールへの推薦団体を発表します。
…西星学園大学付属 西星高等学校
…桜学園高等学校
…県立松山商業高等学校
以上 3団体を推薦します」
「お!西星全国だ!!」
「桜高もだよ!」
「いいね~全国。」
桜高は6年連続10回目の全国出場。
俺らの時みたく銅賞はとってほしくないね。
会場の外に行き、蓮希は西星のところに行ったから俺と京汰で桜高のところに行った。
「あ、和葉先輩!きてくれてたんですね!」
「金賞おめでとう!」
「ありがとうございます!!」
コントラバスの後輩である2年のりおんがいち早く俺に気づいた。
「和葉先輩にそして…京汰先輩だ…!」
テナーサックスで同じ中学の和がやってきた。
和は本当に京汰のこと尊敬してるからなぁ。
「京汰先輩も来ていたんですね!」
そう舞花がやってきた
「俺は?俺」
「いやあの、蓮希先輩から和葉先輩と支部見に行くって聞いてたんですけどまさか京汰先輩いるのは…しかもなんか先輩の母校桜樺なのに和もいるサックスパートに馴染んでるし…」
「まあまあそれはいいじゃん。そして金賞おめでとう!」
「ありがとうございます!」
「…夏波はどこさ?」
「あー、今審査結果貰いに行ってます」
「まじか。一番会いたかったのに。俺もう行かなきゃ」
「あ、じゃあ夏波に言っておきますね。」
「うん、じゃ!」
ここで桜高の皆とはわかれた。
いやー、そーいえば夏波って部長だったか。
高校生の演奏ってやっぱりすごいと思った。
俺もこういう演奏できたのかな、と思うけどやっぱりこういう演奏できた気がする。高校生だからこそできること。吹奏楽に駆けた3年間。本気で吹奏楽をやる高校生って本当にいいな。
いざ本気でやるとこの楽しみを忘れちゃうけど、今になってみるとやっぱりいいものだ。これは吹奏楽に限らない。他のスポーツだってそうだ。
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