(末松晟一)
幼なじみという近い存在なのに
片想いが報われないのはどうしてだろう。
告白はもう7月にしたんだ。
付き合うのはダメだったけど、俺がキスとかしても応えてくれている。甘えても動じない。彼女に好きな人がいればそりゃダメだったろうけど、彼女も恋愛から避けたい気持ちもあるんだってさ。
まあ俺も中学で一時期彼女いたけど、向こうから告白しといて喧嘩した時勝手にキレて距離おいて、別れよって言われて何がしたいのかよくわからんかった。
「なんかさ、私らあれじゃない、いわゆるセフレみたいなやつ」
「セックスはしたことないけどね俺らでは。」
「まあね。付き合ってもないのにこんなことできるの晟一だけだし今だけだし」
「真面目くんな惣平に知られちゃ俺99%の確率で殺されるから黙っとけよ」
「それはわかってるさ」
碧葉は去年は詩音と付き合ってたけど、碧葉のほうから一方的に振ったのだ。でも本人も未練はかなりあったようで。
それから俺の家で2人で過ごす事が増えた。
告白はダメでもそれ以外の行為は受け止めてくれる。本当のカレカノみたいだけど、これはこの空間だけで2人きりの時に、付き合ってない2人の勝手な行為。
「んーじゃあさ、この状況でヤったらさ完璧なセフレじゃね」
「まーそーだよね」
「碧葉とやってみたい。お前初めてじゃねーしょ?」
「詩音と2回ぐらいしか経験はないよ」
「俺も経験したの2、3回くらいだから」
「あー。聡美ちゃんでしょ?」
「まーね。何で付き合ってたんだろうねって。でも別れてからだもん。初めては」
中2の時に2ヶ月ぐらい付き合ってた元カノの聡美とは別れてからがはじめてだった。そいつは高校は東商いって今彼氏いるけどね。別にもうどうでもいいけどさ。本気で好きになったのは碧葉だけだし。
一方碧葉は詩音と経験はある。詩音は見た目や普段の生活からは考えられないぐらいエロいから…。
「碧葉も重症だよね」
「晟一に言われたくねーわ。私はほぼ詩音のせいだ」
「そーだけどさ。幼馴染み二人揃ってだな」
「彼女作る気はないの?」
「ないよ。こうやってるほうが一番だからさ」
「でも誰でもできるって訳じゃないよね」
「ほんとさー。俺も碧葉ならなんか…」
「なんかもう共通点ありすぎてね」
「もう分かり合えるの碧葉だけだな」
そう言って俺は後ろから抱き着いた。
「はじまったー」
「今日はベタベタくっつくだけじゃねーぞ?」
「わかってるよ…」
こいつ意外と胸でかい。
「ねえ…やめてよ」
「わかってるんじゃねーのかよ?」
碧葉は何も言い返せなくなったのかそこで黙った。…と思いきやキスをしてくる。碧葉からとか珍しい。
しばらくして舌を入れ、同時に制服のリボンとボタンを3つ外す。
「ゃ…」
「声我慢してたんか?」
そう聞くと碧葉は首を左右に振った。
「うそつけ。我慢すんなって声ぐらい」
「恥ずかしいよ…」
「気にすんな。この部屋には俺らしかいねえ」
「でも隣の部屋に美紅ちゃんいるよね…」
「美紅ならいーよ。気にすんなって」
「…そーですか」
我慢を諦めたようだ。
こいつのはじめてが詩音だからこそこいつはこんな風になったのかもな。まああいつには感謝だ。
「もう今更止めようとしても無駄だからな」
この瞬間から僕らは壊れていった。
どれくらいの期間、この行為は行っていたのだろう。
あの日から2週間ほどたった頃…もうすぐ11月になろうとしてる時。
「晟一お前、商業科の子と何かあったんか?」
朝、朝練を終えて教室入った瞬間に、同じクラスの一樹に聞かれる。
「…何、何の話」
「快人に聞け。あいつが言ってたから」
「ってことは吹奏楽部?碧葉のこと?」
「うん。何かあったのかって」
「別に、なんも…」
もしかして…
快人が朝練から教室に戻ってきたと同時に聞きに行った。
「…部活の商業科2年女子の先輩で1人、碧葉のことあんまり好んでないんだけどさ。晟一とのこと校内中に言いふらしてる」
「は??」
「その先輩発言力すごくて、商業科では既に噂になってるみたいだよ。むしろ美紅先輩から聞いてないの?」
いや、美紅からはそんな話聞いてない。
でも最近何かを言いたげにはしてた。
「むしろなんで知られてるの」
「その先輩が美紅先輩と遊んだ時に、だって。詳しいこと美紅先輩に聞いてみたら?」
もしかして、3日前のことだったりするか。最後まではしてないけど。
たしかに隣の美紅の部屋からはにぎやかな声が聞こえてた。それで美紅は怖がってたんだ。
昼休みに食堂へ行くと、2年生の女子につかまる。美紅と仲良い人だ。名前はなんだっけか。
「あ、ヤリチン」
なんて、すごいでかい声で言われる。
「なんですか」
「なんでもないよ、顔を見に来ただけ」
一体何なんだ。
「碧葉ちゃんのほうがひどい言われようだから、気をつけた方がいいよ。晟一も。」
その人と一緒にいた紗南先輩に小声で言われる。
「にしてもかなりやばくね?お前大丈夫なん」
たまたまそこにいた翔真に聞かれる。
翔真は昔から頼れる奴だ。商業科だから、詳しいことは知ってるんだろう。
「悪いのは俺だけどね」
「それもそうだけど、あの人だってやってること変わんねえみたいだし」
「それは美紅に聞いてる。」
「まあそれはいいとして、問題は惣平だよ。あいつ碧葉のこと好きだし」
そうだ。こっちのほうが俺にとっては問題なのかもしれない。惣平には幼馴染みってこと隠してるし、ましてやこの関係を知られちゃお終いだと思っていた。好きな子がこんな風に汚されて、いい気なんてする訳ないよな。俺ですらそう思うし。
「まあ口出しされても仕方ないか。」
「行為を辞めようとは思わないのな」
「うん」
「即答かよ。」
だって、碧葉のことは好きだから。
好きな気持ちは俺にだってある。
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