(黒川航平)


    学校帰り、一人で歩いてると…

    「こうちゃん!!!」
    そう勢い良くやってきた彼女は、とても久しぶりに会った幼馴染みだった。

    彼女の名前は上沼星菜といい、俺の2つ下。星菜が中1になる前にあいつは引っ越したため、会うのは三年ぶりだろう。

    「おー、星菜かー。よく俺の事わかったな」
    「だって、こうちゃん相変わらず身長でかいからすぐわかったもん」
    「そこかよ」
    「てかこうちゃん西星なの?」
    「うん。お前は?」
    「私?は東商だよ。トロンボーン続けてるの!」

    東聖商業高校…略して東商は吹奏楽部は小編成の強豪。俺は小学生の時に星菜を吹奏楽に誘ってあいつが始めたのはトロンボーン。んじゃあ、星菜はずっとトロンボーンなのか。


    「私、この近くに住んでるんだよね。」
    「そうなのか。じゃあ中学は星華?」
    「うん、星華だよ。たしかこうちゃんたちのとこに美玲先輩と沙月先輩いるはず」
    「うん、いる。美玲は同じパートだし。」
    「あー、ってことはまだパーカッションなんだね、」
    「小3からパーカッションしかやったことないけどな」
    「よかったらうち上がってく?お母さんもこうちゃんに会いたがってたし。」
    「いいの?じゃあ行きたい!」


    というわけで星菜の家にあがらせてもらうことになった。
    星菜の家に入ると一番にかけつけて来たのは星菜の2つ下の弟の将星だった。

    「こうちゃん!」
    「お~、将星。元気だったか?」
    「俺は元気だよ。凌平も元気か?」
    「元気だよ。凌平はあいつは今部活だからな。明日中フェスだからな」
    「凌平はまだサックスやってんの?」
    「うん。あいつはバリトンサックス吹いてる」
    「俺は星華中でバスクラ吹いてるよ。」

    将星は小学生の時はクラリネットを吹いていたはず。その流れでバスクラになったんだろうか。

    「ってか俺と母さんで今から譜面台買いに行くところだったんだけどさ、こうちゃん来たしどうしよう…」
    「譜面台買いに行くほうが優先じゃないの。あんた先週の本番で譜面台無くしたんでしょう。明日も本番じゃん。中フェスじゃん?」
    「…そーですね星菜の言う通り。行ってくるよ…あーあ…」

    将星は星菜の言うことに悔しそうにして家を出た。


    「うるさいのが消えてよかった」
    「うるさいのっておい」
    「だって本当のことだもん」
    「そりゃ、そーだけど」
    「それよりもさー、話あるの」
    「話?」
    「えっと、その……再会していきなりでごめんね。…こうちゃんのこと…好きなんだ、昔から」

    ……星菜は俺の方に真っ直ぐな瞳を向けている。

    「や、あの、返事はすぐじゃなくていあよ。再会したら言おうと思ってただけだから…」
    「うん。…考えさせて」


    それから俺らは部活の話や学校の話したり、将星が帰ってきたら将星も入れて3人で話してた。





    恋愛…かぁ。
    星菜はいつからそんな想いを抱いていたのだろうか。そして今までもずっと想い続けてくれていたのだろうか。

    俺は高1の時に3ヶ月ぐらい彼女がいたぐらいしか恋愛経験はない。吹奏楽部は比較的女子が多い部活だけどそんな対象で見る人はいなかったし、むしろ星菜以外の女子のこと可愛いって思ったことあったっけ。って。
    正直言うと俺はいつだか星菜のことが好きだった時があった。でも俺ってそこらへんは自分から言わないから。ってかまず言いたくないし。


    次の日の部活の時に蓮希と喋ってて。俺は昨日のことを話した。

    「航平先輩、まじですか!」
    「うん。告白OKしようとは思う」
    「相手は幼なじみ…凄いっすね、その女の子も。人のこと言えないっすけど」
    「3年ぶりぐらいに会ったからな。蓮希も好きな子と別れてもずっと好きなんだっけ」
    「そうっすよー。先輩も好きだったとかもうまさに幼なじみ恋愛の定番…」
    「定番って何だそれ。」
    「幼なじみ恋愛って実は両想いって多い気がします。」
    「まー、俺の弟の友達もそんな感じのいたけどな」
    「おっと、ちょっと身近にいたんすね。先輩頑張ってくださいよ~応援しますよ」
    「ありがと蓮希。」


    やっぱりこいつには何でも話せる。蓮希も蓮希で年下の子にずっと片想いしてるし。





    蓮希たちにエールをもらい、帰り際に星菜に連絡し、会ってもらうことになった。場所は西星近くの公園で。
    星菜は東商の制服を着ていた。ちなみにいうと東商の制服は市内でも可愛いと評判だ。

    ってそんなどうでもいあことはおいといて。


    「…昨日のこと?」
    「うん」
    「意外と返事早いね。こうちゃんのくせに」
    「くせにって何だよ。気持ちの整理が早くできただけ。」
    「…そっか。」
    「付き合って…ほしい。」
    「…本気で言ってる?」
    「そりゃあ。」
    「…ありがとう。…よろしくお願いします」
    「こちらこそ」



    俺らはしばらくの間手を繋いでた。






    ………


    「え、先輩、見事付き合うことできたんですか!」

    次の日の部活終了後に蓮希に言うと、大声で返された。

    「しー、お前、声でかい」
    「あ、すいません。でも良かったっすねー。」
    「まー。向こうは東商の吹部入ってるし忙しそうだけど」
    「先輩の彼女って東商の吹部なんすか!」
    「そー。トロンボーン。1年ね」
    「あー、上沼星菜ちゃんっすか?」
    「なんで蓮希が知ってんだ」
    「父親同士が高校の同級生らしいっす。てかあの子めっちゃ可愛いじゃないっすか!」

    そう話していたら横から英奈と京奈がやってきた。

    「え、なに、こうちゃんの彼女が可愛いって??」
    「顔見てみたい!!てかこうちゃんいつのまに彼女作ってるし」

    こいつらに知られたらもう後はない。断っても多分しつこくされるだろう。特に英奈は。
    そこに沙月もやってきた。沙月は星菜の中学の先輩っぽい。そしてトロンボーンで。

    「英奈先輩、京奈先輩!航平先輩の彼女って多分私の中学の後輩ですよ!ほんとに可愛いんです!写真これです」
    「うわー!可愛い!」
    「この子の彼氏がこうちゃんとかほんとこの子勿体無い」

    「おいお前ら!!」




    まあ、とりあえず、スタートを踏み出した俺ら。西星のやつらにからかわれながらもちゃんと星菜の彼氏として一緒に過ごしていきたい。


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